1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、きみは何を見てるの?」
初夏の夕暮れ。窓から見える景色は茜色に染まっていた。
きみは、椅子に腰掛けて外を見ていた。
「面白いもの見える?」と聞いてみた。
「見る必要なんてないよ。何も見えないんだから。」
「空は見えないの?」
「見えるよ?でも、特に面白いことはない。退屈だよ。」
確かに、君の瞳は何を映しているわけでもないように見えた。
「この世界は複雑で理不尽なくせに退屈。」と、私は言った。
「その通りだね。」
ふたつの声は、がらんどうな教室に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!