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 夢を見たのは、旅の途中に寄ったこの地が、オレの生まれ故郷に似てるせい。  夢ん中で、オレは鳥になっていた。何色かはわかんねえ。自分の体の色なんて気にしなかった。ただ、翼のある、小さな鳥だった。オレは自由に青い空を飛び回っていて。そんで。  ……ヤツは、人間だった。  何にもない大地にぼんやりと突っ立っているのをオレは高い空の上から見下ろしていた。ぼんやりと立つヤツは、古ぼけた鳥かごを片手にだらりとぶら下げている。オレはヤツの頭上をくるくる飛ぶんだけど、ヤツはオレに気づきもしねえ。  ヤツはただ、空っぽの鳥かご持って突っ立ってるだけ。……だけなんだけど、それがなんだかとても寂しそうに見えて、オレはうかつにもヤツの鳥かごに飛びこんでしまうのだ。  それでようやくヤツはオレの存在に気づくんだけど、だからといって鳥かごの扉を閉めようとはしないし、やっぱりただぼんやりとしている。オレは鳥かごん中、ばたばたしたり、びちびち言ってみたリするんだけど、ヤツはオレのことなんか気にもしねえ。  オレはとても、寂しくなる。  寂しいまんま、それでもオレはびちびち言ったり飛び回ったりすんだけど、やがてヤツは、オレの幸せがどうこうとか、そんなわけわかんねえこと言って、鳥かごごとオレをオレのばあちゃんに渡してしまうのだった。  ばあちゃんはありがたそうに鳥かごごとオレをその胸に抱く。もう鳥かごを持たないヤツは、オレを、オレの育った家に置いて、出て行っちまうのだ。  オレは慌てて鳥かごから出る。そしたら…そこは夢の妙、オレはポンと人間に戻ってしまうのだった。  もうすっかり消えてしまったヤツを追うためオレは、「行くな」と止める幼い弟を振り払い、ばあちゃんの小さな手を跳ね除け、オヤジにぶんなぐられて、それでも飛び出そうとした。  鳥かごを飛び出し、家を飛び出し、大声でヤツの名前を呼んで。
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