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 この土地の女は男の土地の女に比べ小柄で華奢である。肌白く目鼻が小さい。その小さき女どもをどれでもいい我が物とし、姻を結び、己が身の上を、ひいては自分の故郷を大樹へと寄せる。  しかし繰り返すが、この土地では男の育ちは忌避すべき対象でしかない。大柄な体格も、派手な目鼻立ちも、浅黒い肌も長い手足も癖の強い髪の毛もすべて、この国の者から忌み嫌われている。どうして嫌われるのかその理由が男にはいまいちわからない。この国の言葉を覚えてすぐ、酒場で理不尽に狼藉を働かれたその反動に、どうして嫌うと酔漢を問い詰めたこともあったがまるで要領を得なかった。寄るな触るなの一点張りであった。そうしたことを繰り返し、そのたびに徒労感を募らせ、やがて男は忌み嫌うに明確な理由のないことを知った。  違うから避ける。  そういうこともあるかと、元来温厚である男は思う。理解できずとも納得しようとおのれに云い聞かせた。     
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