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女は男の目を見つめ、優しそうな眼差しに惚れたんだと云った。
その日から男の、異国の街を訪れる頻度が増した。
まさに、そういうこともある。
男はだから、大樹に拠るため様々に努力を重ねてきた。村の誰も好んでやりたがらない交易請負の役も進んで買って出、異国のこの地に公然と足を運べる理由も作った。男はひたすらおのれの中に流れる血が恨めしかった。憎んですらいた。どうしてこちら側に生まれてこなかったのだろうと考え続けていた。そんな男だから、貢物や愛想笑いを繰り返して、この土地での有力な一団に取り入ることができたときは心底喜んだものだ。
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