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序
林檎を見る。
酸いか甘いか想像する。色や形や匂いで考える。
猫をなでる、愛でる。
この猫はあと何年生きるのだろう、体格や性格や食欲や病歴や、猫の生きる環境で考える。
考えることはすなわち生きることか。
余人は云う、
生きる意味が欲しい。
なんのために生まれてきたのかを知りたい。
妄言を吐くな。
生きるに意味はない。
ただ欲せ。
渦巻く欲求を体現せしめよ。
欲などないと虚勢を張るなら死ね、今すぐ死ね。
虚無に憧れる薄ぺらな餓鬼ならいざしらず、いい年をして欲のひとつもない者など生きる価値はない。
死ぬのが怖くないと嘯き、死ぬ理由がないから仕方なく生きていると返すのだろう続ける。
抗弁するな。
執着を受け入れろ。
呆けている暇はない。
声を発せ
力を示せ
走れ走れ
書け描け、詠め詠え、耕せ育め狩って演じ漁って創れ、組め編み出せ、極めろ、捻り出せ。
今おまえがぼうと沈考していられる事実は、何者かの庇護があってのことと知れ。
蜂蜜よりも甘ったるい日々に耽溺している証拠。
なにかを目指し、又なにかに追われている者は生きる意味など考えぬ、生きる術を考える。
生きろ
強く生きろ
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