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なんていうものだから、ゆかりはぎょっとして小夜子の顔を見上げた。小夜子がバチっとウィンクをしてくる。
「いや、ホント驚き。まさかゆかりが、あの月島課長と付き合うなんてねー。彼氏いない歴、何年だっけ?」
遠慮のない質問にげんなりとしながらも、
「二十五年、年齢と一緒。それにつきあってないし。課長が突然、言ってきただけで」
とゆかりはカラになったコップを小夜子に渡して再び横になると、布団を顎のあたりまでひきあげながら答えた。小夜子がぷっと吹き出した。おなかを抱えて、ひーひー笑い苦しんでいる友人をベッドの上から見下ろして、ゆかりはため息をついた。そんなゆかりに小夜子が、
「いーじゃん、あの月島課長だよ。イケメンな上に仕事もデキる。ゆかりちゃんの空白だった恋愛ノートに、いよいよ文章を書きこむ日が来たってことで」
「何、恋愛ノートって」
ゆかりが半眼になって、小夜子をちらりと見た。
「ゆかり、高校の時文芸部だったじゃん。だからそんなノート、持ってそうだなって」
高校からの友人らしい、小夜子の軽口だった。バカバカしくなって、ゆかりは布団を頭から引き被った。
ーー恋愛しないのは私なりに理由があるんだから……。
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