0人が本棚に入れています
本棚に追加
保育園でのお昼寝時間。私は嫌いだった。
眠くないし、遊んでたいのにどうして寝ないといけないの?と、子供心ながらにそう感じてた。
その日私は、友達の良太君と一緒におままごとをしていた。
「みんなーお昼寝時間だよー。」
先生の声が響く。みんなは「はーい。」と言いながらおもちゃを投げ捨てて先生の元へと駆け寄る。
だけど私は立とうとしなかった。
「どうちたの?春香ちゃん早く行こうよ」
私の顔を覗き込む良太君。
「わたち、ねちゃく(寝たく)無い!」
「お昼寝ちないと大きくなれないよ。」
と、良太くんは言った。
「じゃあわたち、このままでいいもん。」
「じゃあわかった。お布団の中でこっしょり(こっそり)」
「こっしょり?」
うんと頷く良太くん。
「わかっちゃ(分かった)」
そうして良太くんは私の手を取って先生の元へ駆け寄った。
そしてお昼寝のお部屋までみんなで移動した。
他の子達はもう夢の中だ。
「春香ちゃん。」
ヒソヒソ声で話をする。
「春香ちゃんはちゅきな(好きな)人いるの?」
「私は良太くんがちゅきだよ。」
子供は単純だ。だって大嫌いなお昼寝の時間に一緒に起きててくれるだけで好きになってしまうのだから。
「僕も春香ちゃんが好きだよ。」
そう良太言ったとき、私の唇には温かいものが重なった。
「なにちたの?(なにしたの?)」
「ちのう、(昨日)パパとママがちてたの。ちゅきな人にちゅるん(するん)だよ。」
「 ちょうなんだ(そうなんだ)」
この頃は深い意味なんて考えてなかった。
だけど心臓がいつもよりばくばくしてる気はした。
「あ、ちぇんちぇい(先生)来る」
そう言うと、良太くんは寝たふりをした。私も固く目を閉じた。
先生はみんなが寝てるかどうか確認するとすぐにいなくなった。
「良太くん?」
隣を見ると良太くんは寝息を立ててスヤスヤ寝ていた。
寝ちゃったか。
そう心の中でいうと私は唇に手を当てた。
その日からお昼寝の時間になると私たちは先生が見回りに来て良太くんが寝てしまうまでこっそり話したりしていた。けど、唇を重ね合うことはなかった
最初のコメントを投稿しよう!