ただ一つだけだが、その一つが私たちを阻むのである。

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ただ一つだけだが、その一つが私たちを阻むのである。

「先生、彼女いるの?」 「芸能人で言ったら誰が好き?」 「先生、私たちの中なら誰が一番可愛いー?」 新緑の影が涼しく、ベンチに座ってただボーっとしている先生が女の子たちに囲まれていた。 ボサボサに見えたあの髪は、実はワックスでツンツンに立たせて、少し捩じってたりしてるし。授業中だけ付けるメガネは、高級ブランド品。腕時計もごつくて先生の手に似合っている。  隠しきれないモテオーラというのだろうか。あの先生からは、女の子たちが気安く話しかけやすい、そんなオーラが漂っている。 「また通崎先生、女の子たちに捕まってるよね」 「ほんとう。嫌がらずヘラヘラしてるからよ。26歳にもなって女子高生たちに鼻の下をのばしてさあ」 「え、先生、26歳になったの?」 渡り廊下から、ヘラヘラ笑ってる先生を横目に見ながら私は頷いた。 「昨日、26歳になったみたいよ」 そして私も誕生日で18歳になった。 そこで先生に告白して玉砕している。 『君は生徒だから、告白は受け入れられないよ』と。
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