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拝啓 君へ
いきなりのお手紙を驚いているかな?
今まで手紙なんて書いたことなかったから、無理もないかもね。
僕は今まで通り元気でやっています。君は僕の事をよくドジだと言っていたけど、もうそんな事ないんだからね?お仕事だって、1人前に出来るようになったんだから。
君の方はどうですか?ちゃんとご飯は食べてますか?好き嫌いが激しい君だから、偏ったご飯になってそうで心配です。
皆と仲良くやっていますか?君は喧嘩っ早いから誤解されがちだけど、誰よりも優しいから、ちゃんと話し合えば皆分かってくれるからね?
君は出航のあの日覚えていますか?
僕は今でもよく覚えています。
とても大きな大砲を沢山載せた船の前で得意げに
俺が乗る船なんだ!
と色々自慢してたけど、正直僕にはなんの事かさっぱりだったよ。
それでも君は楽しそうに話し続けて、
その顔が無邪気そのもので、
僕はクスリと笑ってしまいました。
一通り話し終えたと思ったら、君は急に黙り込むから、何事かと思ったよ。
そうしたら真剣な表情で僕の目を見て、
命をかけて、君を守るから。
絶対に君を守るから。
なんて言うんだからさ。驚いたなんてものじゃなかったよ。君がそんなことを言うとは思わなかったからさ。それにね、少しだけ悲しかった。
僕はね、あの時の君の言葉の意味を今でも考えてます。
君は、僕の事を好きでいてくれたのかな?
だからああやって言ってくれたのかな?
ずっとそんな調子だよ。
僕はね、
君が好きだったんだよ。
ずっと前から好きだったんだよ。
だからさ、「命をかけて」なんて言わないで。
僕を守る為に命を落とす位なら、僕が命を落とす時に側にいて抱き締めて。
…………ゴメンね、こんなワガママ言っちゃって。
君は君で、覚悟を決めて言ってくれたのに。
帰ってきたらまた、出航する時にした話を聞かせてくれないかな?実はね、君の乗る船の名前しか覚えれてないんだ。
楽しみにしてます。
君を好きな人より
彼女が手紙を郵便に出した翌日のラジオで、聞き覚えのある単語が流れてきた。
ラジオのアナウンサーは無機質な声で、その後に「轟沈」と付け加えた。
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