-01.天災と天才。

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-01.天災と天才。

あー…何か居る…。 アレ、アイツ、何だっけ…。 …面倒臭ぇ、一ツ目の小鬼で良いか…。 「なぁ、オイ。其処のチビ。嗚呼、お前だ。お前で合ってる。何か困り事か?」 掌程の大きさのソイツは、辺りをキョロキョロと見渡し、やがて自分の事だと気付くと、しゃがんだ俺の足許に走って来た。 「喰い物か?薬草か?此処に在るモノなら持ってって良いが、対価を払え」 小鬼はおどおどし、来た道を引き返そうとしたので、その着物の襟を掴んで、目線まで持ち上げた。 「否、別に俺がお前を喰おうとか、捕まえようとか、持ち物全部出せとか言ってんじゃねぇよ。仲間が居るなら、その分もやる。そうだな、お前からは情報を貰おうか。詳細な種類と個体数、住処を教えろ。何か有ったら、助けてやる。種の保存の為だ」 小鬼は俺の言葉が理解出来たらしく、頭の大半を占める目玉を輝かせた。 「お前等、どんぐりは喰うか?どんぐりなら、すぐに生える様にしてやれる。シイか?クヌギか?コナラか?好きなの何種類か持って来い」 一ツ目の小鬼はぴょいと、飛び降りると、この白銀(しらがね)神社の鎮守の森の方へ、走って消えて行った。 その間暇なので、辺りを見廻る。 この神社は建て替えているとは言え、平安時代から在るとの事で、外界との境界で在るこの森も同じくらい古い為、樹々が弱っている所が在る。 特に酷い所を探し、その場で小鬼を待った。 暫くして戻って来た小鬼の手には、自分の大きな目玉程のクヌギや、シイの実が握られていた。 小鬼から其れ等を受けてると、両の手で包み込み、神気(しんき)を掌に集中させた。 「…汝、大山津見(オオヤマツミ)を苗床とし、草ノ祖(クサノオヤ)鹿屋野比売神(カヤノヒメカミ)慈愛(いつく)しみを享受し、句句廼馳(ククノチ)の様に大樹と成り、我が生の間、枯るる事無く、その恵みを求むるモノ等に分けよ…」 辺りは漏れ出た神気(しんき)の所為で、弱った樹々は精気を取り戻した。 小鬼に木の実を差し出した。 「…これは大樹に成るから、お前等の住処から少し離れた所に、1つ1つを離して植えろ。すぐに大樹に成るから、土に埋めたらすぐ離れろ。良いな」 小鬼は理解出来たのか、木の実を受け取ると、ぺこりと頭を下げ、ぴょいと住処に戻って行った。
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