-01.天災と天才。

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「兄様ー、何処ー?」 白衣に紅色の袴を履いたコイツは、俺の双子の妹、紫縁(しゑん)だ。 女で在る事、髪が長い事、瞳が紅い事を除いたら、俺と瓜二つだ。 「どうした?」 「あ、居た。」 「夢視(ゆめみ)で呼ばれたの。」 「誰にだよ…」 「んー…一杯!」 「お前な…」 「」 「僕と一緒に行くの、出ておいで。」 紫縁が声を掛けたその瞬間、黒い塊が紫縁目掛けて飛び出した。 『主人(あるじ)!俺を連れてけ!」 「出やがったな、馬鹿狐」 デカい躰で後ろから紫縁に抱きつき、尻尾を大きく振るコイツは紫縁と主従関係を結んだ、ストーカー馬鹿狐だ。 口を開けば、『主人(あるじ)、好きだ!』、『愛してる!』、『祝言してくれ!』と言う、まぁ、何つーか、語彙力の低い、哀れで愚かで可哀想な奴だ。 紫縁も紫縁で、コイツの何が気に入ったのか知らねぇけど、何で主従関係を結んだんだか。 …でもまぁ、何やかんや強いのは認めてやる。 『主人(あるじ)、今日は何処までだ?地獄か?高天ヶ原(タカマガハラ)か?黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)か?何処までだって、付いて行く』 人間に化けてる馬鹿狐だが、完全に人間に化ける気は無いらしく、耳と尻尾がそのままだ。 多分、その方が紫縁に撫でられると狙っての事だろう。 あざとい奴だ。 「そんな所には行かないよ、クロ。逢魔ヶ原(オウマガハラ)だよ。」 馬鹿狐は紫縁に首や耳を撫で繰り回されて、幸福(しあわせ)そうに目を閉じた。 「ギン。」 『此処に』 『
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