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あのピラミッドの前で死のうとしているのではないか、そんな考えが浮かんでいた。
もう少し英語が分かれば話を聞くところだが、私の読解力では無理なことだった。
それなのに彼は数多く並ぶタクシーの中からわざわざ私を選んだ。もしかしたら詳しいことを聞かれないように、英語を話せない者を捜していたのかもしれない。
「ここ、レストラン」
15分程で着いたレストランに案内する私。ホテルのレストランから比べれば味は劣るだろうが、値段も味もまあまあで軽く食事をしたい観光客に人気のあるレストランだ。
白い壁に赤字の建物に入ってすぐに彼に話しかけた。
「あなた、シガレット欲しい?」
「シガレット?……いや」
「そう。こっち」
喫煙席と禁煙席に分かれた店内の、禁煙の方に彼を誘導する。男を座らせて英語のメニューを見せる。
「君の好きなのを注文していいよ」
「あなた、ドリンク欲しい?」
「コーク」
「オーケー」
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