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そうしているうち、先に体力がなくなった男の方が地面に座り込んだ。
「水、君は持っていない?」
それに一度頷き、私はリュックサックからペットボトルに入ったウォーターを彼に渡した。
「いくら?」
「2ギニー」
「そう。じゃあ、これで」
男は5ギニーの紙幣を差し出す。釣り銭を渡そうとズボンのポケットを探る私に彼は言葉を続けた。
「いらない」
「何?」
「釣り、いらない」
そう言って男はペットボトルのフタを確かめることなく開けて、豪快に水を飲んだ。
「あなた、変」
私の英語に彼は笑った。
「ああ、よく言われる」
「あなた、どこから来た?」
「ロンドン」
「なら、ここはとても暑い」
「そうね」
細長い顔にシワを作って彼はまた笑う。
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