1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ピラミッド、中、案内」
「いいや、大丈夫。僕はずっとここに来たかった。自分のルーツを探るために」
男は後ろのスフィンクスに視線を向けて口を閉じた。目を一度擦って、外していたサングランスを装着する。
「ルーツ?あなたはイングランドから来たと……」
「ああ。親もイングランドさ」
「なら、ここルーツ、ない」
「いいや、ある。ここに」
そう言うと男はピラミッドに目を向けた。もちろんそれだけで彼が何を言いたいのか分かった。
「ここはメンカフラー王のピラミッド。あなたの祖先、違う」
「どうしてそう言い切れる?」
「国、違う。時代、違う」
それに彼は口端を上げる。
「リインカネーション……あなた、知ってる?」
「リイン?」
彼の単語を聞き取れずに閉口する私。
「リボーンは?」
「リボン?」
「昔、生まれる、死ぬ、再び生まれる」
「ああ、分かる」
「昔、彼。今、私」
男は彼と言いながらピラミッドを指し、そのあとに自分を指した。その言葉に私は苦笑い一つ見せて返す。
最初のコメントを投稿しよう!