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「すぐそこ、病院」
それに彼も鼻で笑う。
「あなたは正しい」
彼はジョークを受け止めるかのように返す。それの反応に困り、私は顔をしかめる。
男が酔っているとは思えない。だが、正気であるとも言い難い。
「あなた、何をする、ここで」
「昔、思い出す、ここで」
「思い出す、そしてどうする?」
その質問には彼は答えず、水を飲みながらギーザの街に目を向ける。
「……宿はあそこにある、どこかを探す。だから、もう大丈夫。一人にして欲しい」
ペットボトルを持った手で彼は街を指差す。
「私、案内する」
渋い表情をして彼はボトルのフタを閉める。そして立ち上がり、すぐに走り出す。仕方なく彼の後を追いかける。
ドッ
10秒も経たないうちに、慣れない砂地に足をとられた彼は転んだ。
「大丈夫?」
砂塗れの彼の顔に私は笑う。
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