0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
神様
私は人間に辟易としていた。
自分勝手に自然を破壊する人間。
同族同士で殺し合いをする人間。
私の作り上げたこの美しい星にたった一つ紛れ込んだ異物。
私は人間をそんな風に思っていた。
そして私は考えた。また一から世界を作り直してしまおうと。
私は天から大量の隕石を降らせ、大地を粉々に砕き、全てを浄化の炎で焼き払った。
何もかもをまっさらな状態にして、今度はもう少し時間をかけて世界を作り直そうと、思っていたのに。
私はまた1つ間違えてしまったのだ。
私は私自身を、初めからやり直しの対象にしてしまったのだ。
全てを終わらせた世界で、私は赤ん坊となりこの世界に堕ちてしまった。
神である私の力の為、世界は見渡す限りの焼け野原。
一人で歩くことすらできない私は、このまま無様に死んでいくのか、と覚悟を決めた。
何日たったかわからないけれど、不思議と私は空腹感も覚えず、何も無い世界で未だ赤ん坊として生きていた。
若しかしたら自分勝手に世界を終わらせた私に、誰かが罰を与えたのだろうか?
せめて自分の意思で動けるようになるまで、私はずっとこのままなのだろうか?
一人ぼっちには慣れていた筈なのに、どうして赤ん坊のこの姿だと耐え難い苦痛なのか、神である筈の私にはわからなかった。
人間を、一人くらい残しておけばよかった、なんて思いもしたけれど、この広い何も無い世界でその人間に会える確率なんて、と思っていた時に、ソレは聴こえた。
私の呼吸と鼓動以外の音、何も無いはずの世界で聞こえるはずの無い音。
人間の女の子が、私に近づいてきたのだ。
その子は私の傍らに膝を付き、呆然としていた。
私は無意識に、その人間に縋るように、たった一人、この世界で出会えた大嫌いな筈の人間に、
小さな自分の手を伸ばしていた。
その手を握り締めてくれるその温かさに、私は感じた事も無い安心感を覚えた。
そしてこうも思ったのだ。
彼女は若しかしたら私の神様なのかもしれない
最初のコメントを投稿しよう!