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缶コーヒーを片手に、助手席にもたれる。海沿いに伸びるこの道路は、夏休みなら渋滞が日常だろう。だが、夏でも休日でもない今日は、横に流れる海の景色も、すいすいと進む。
すぐ横に見える黒革のドライバーグローブが、ハンドルの上で小刻みに震えている。信号で止まる以外、複雑なドライビング・テクニックなど必要ないのに、存在だけは主張していた。
途中、道路の路肩がビュンビュンと音を立てるように後ろへ飛ぶ。それに対して、遠くに見える空と水平線はマイペースに進む。缶コーヒーを飲む間に進む距離が、この旅のどんなことに貢献するのだろうか。
景色は視線を吸い込むだけで、問いには答えてくれない。どこにあるともわからぬ答えを探すことに諦めると、気が遠くなった。
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