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「……先程、恵まれた者という言い方をしましたが、それはあくまで私の主観です。あなたを追う者がそうであるかは、私には判断できかねます……あの方と、その側近2名について」
ジャックの口から、期待していた情報が飛び出てくる。しかし、やっぱり実際に聞いてみると、ずん、と心が沈むようだった。
「そっか……3人もいるのか……」
「気を落とさず、店主。何も命を取られるといったような事にはならないでしょう。決断を迫られる事にはなるかもしれませんが」
ジャックはそう言うと、視線を店内の中心部に投げやった。店の中心に置かれた、いつもの柱時計。私が来た時から此処に居る。
木のツヤはすっかり剥がれ、しかも文字盤の針は失われてしまっている。もはや時計といっていいのかわからない年代品、その佇まいと内部の装飾が店内と同化しているのみだった。
私が視線を戻すと、彼の口は三日月を形作っていた。
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