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「おともだちが来るのは初めてよ! おもてなし、やらなくちゃ」
「おともだちじゃなくても初めてよ! おもてなし、できるかしら」
きゃっきゃ、とはしゃぐ二人に連れられ、私は書斎の真ん中に案内される。どこから現れれたのか可愛らしい刺繍のクッションが敷き詰められている中に腰を落とすと、二人は目を伏せてぺこりとお辞儀をした。
「せまいところですが」
「そちゃですが」
「ありがとう」
初夏が溶け込んだような色合いのミントティーを飲み、美味しいと伝えると、彼女たちは一層、花が咲いたように喜んだ。ジャックが淹れるトラディショナルなダージリンとはまた違った華やかな風味があった。珠歩さんの作品は、紅茶を美味しく淹れられる人物たちが必須条件なのだろうか?
「珠歩、いつ帰ってくるかしら」
「珠歩、私達のこと忘れちゃったのかしら」
寂しい、と。珠歩さんの話に戻ると、二人はしゅん、と下を向いてしまった。
「大丈夫。だから私も来たんだよ」
つい頭を撫でてしまうと、もう一人がわたしも! と頭を差し出してくる。麦穂のように柔らかい髪には、潮風と陽だまりの温度が灯っている。
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