V.秘密の住処に招かれて

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「わたしたち、麦の海からやってきたのよ」 「一面の麦が大海なの。金色がとてもきれいなのよ」 「巻貝のお話を聞いて宝物を探すのよ。外の世界にそういうファンタジー(面白い事)はある?」 「水晶のお針を求める冒険にでるの。海の底にあるお城の時間を止めてる、不思議なお針」 「でもそのお針を見つけちゃいけないの」 「わたしたちの冒険も、お城のかくれんぼも終わっちゃうもの」 水晶の針、と聞いて私は先程溶けていった二つの長い鉱石を思い描いたけど、すぐに頭の中から打ち消した。自分たちの宝物が今は書斎(此処)の入り口の見張り番として働いていると知ったら、彼女たちは喜ぶだろうか? それとも怒りだしてしまうだろうか。 「本の世界(おうち)から出てきたのは、珠歩さんを探すため?」 ゆっくりとした口調で尋ねると、そうなの、と二人は大きく返事をした。 「前はもっと賑やかだったけど、他の(おうち)のみんなは眠ちゃったわ。続きがないから行き止まり」 「急がなきゃいけないヒーツロイスは出て行っちゃったわ。あの子は本当にお可哀そう」 「ヒーツロイス……?」
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