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「わたしたち、麦の海からやってきたのよ」
「一面の麦が大海なの。金色がとてもきれいなのよ」
「巻貝のお話を聞いて宝物を探すのよ。外の世界にそういうファンタジーはある?」
「水晶のお針を求める冒険にでるの。海の底にあるお城の時間を止めてる、不思議なお針」
「でもそのお針を見つけちゃいけないの」
「わたしたちの冒険も、お城のかくれんぼも終わっちゃうもの」
水晶の針、と聞いて私は先程溶けていった二つの長い鉱石を思い描いたけど、すぐに頭の中から打ち消した。自分たちの宝物が今は書斎の入り口の見張り番として働いていると知ったら、彼女たちは喜ぶだろうか? それとも怒りだしてしまうだろうか。
「本の世界から出てきたのは、珠歩さんを探すため?」
ゆっくりとした口調で尋ねると、そうなの、と二人は大きく返事をした。
「前はもっと賑やかだったけど、他の本のみんなは眠ちゃったわ。続きがないから行き止まり」
「急がなきゃいけないヒーツロイスは出て行っちゃったわ。あの子は本当にお可哀そう」
「ヒーツロイス……?」
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