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わかったことで、また目の前に大きな壁が出来上がってしまった。
「どうすれば、ヒーツロイスを助けてあげられるかな」
「それは、ヒーツロイスの願いを叶えてあげる事? ヒーツロイスの息が止まれば、くろぎりのまちは晴れるでしょう」
「それは、ヒーツロイスの命を守る事? ヒーツロイスの願いは失われれば、まちは死んでいくでしょう」
「……」
道は二手に分かれたまま、完全にどん詰まりだ。
珠歩さんはまだ――まだ、と願うばかりだけど――私達の前に帰ってきてくれそうにない。
彼女は、ヒーツロイスの物語を完結させる方法を持っていたのだろうか。
書いてから、その力がヒーツロイスという命を生んではじめて、彼女は目の前の命達が自分を見つめてくる様を体験したのだろうか。詰問するような、怨恨のような、困迷の眼差しを向けられたとしたら。珠歩さんは彼女達に、どんな道筋を与えることが出来ただろう。
とにかく珠歩さんは居ない。今は居ないんだ。それを自覚すればするほど、珠歩さんの言葉が確固たる形として蘇ってくる。
―――あの子達をお願いね。
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