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夢という場所を借りて、現実では会う事はない筈の人達と出会い、叶えてきた願いがあった。これが現実に延長線が引けるだけのごっこ遊びだというのなら、現実の世界の人物だって、紙面上の命だって、何も変わらない。
救える縁があるのなら、私はこの場所でも、現実でも、その手を放したくない。
外から、水流が巻き戻る音が聞こえる。
私はささくれてしまったその表紙をもう一度撫でてから、見渡しのきく場所へと戻る。二人の影が、連なって私についてくる。
「もうそろそろお別れの時間?」
「もうそろそろおわりの時間?」
外から知り合いのような音がしたけれど、と結びを揃えられ、冷や汗をかける余裕があるのだから、案外大丈夫かもしれない。
二人分の頭を撫でると、少女たちは私の手に小さな手のひらを重ねた。祈るように。
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