I.その店主は寝不足気味。

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***************** 幼い私は、交差点に立っている。 あの曲がり角の向こうにある、ドーナツ屋さんに向かう所だった。黄色と白の縞しま屋根が可愛いお店で、お店の人もおばさんも笑顔が素敵で。 あそこのはちみつドーナツを売る仕事。それが、あの頃の私が一番やりたかった、将来の「夢」だった。 だけど、 「――私の、『夢』を継いでほしいの」 離れた所に、靴が二足共、転がっている。 目の前の女の人は、私の頬を両手で包んで、裸足で立ちながら私に言う。 「あなたの『夢』は、幸せを見届ける仕事がしたい、だよね? それならきっと、ピッタリだからさ―――」 ―――どうか、あの場所 と―――、を――お願いね――  ――  ―
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