I.その店主は寝不足気味。

3/13
前へ
/173ページ
次へ
*********** 「まぁたドーナツ食べてる」 休み時間。鞄のジッパーを開けていると、後ろから声をかけられる。 口の中にあった、さっくり生地のレモンドーナツに未練はなく、私、椎尾ゆらは一呑みして振り向いた。 「これもあんまり美味しくない」 「そっか」 「明介(めいすけ)のとこのはちみつドーナツがやっぱり一番美味しいよ」 「ありがと」 ははっと笑ってから、明介は私の目元を見て、心配そうな顔をした。 「今日も寝れてないのか?」 クマ、と指摘された自分の目元には、薄いグレーの跡が残っている。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加