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そしてクラスの真ん中では、採寸係の
「腕上げて! まわって、これかぶってみて! 足のサイズ!」
の切れ味の良い声に、指示通りくるくる動く人物がいた。
私である。
「何故」
「明介くんよ。『ゆらが昔、夢とか占いの本について読んでいたのを見たことがあるから、そういうのできるかも』ですって。満面の笑みで推してたんだから」
「陽津子……」
昔って何時。そんなの読んでいた覚えなんてないよ……。喫茶班と夢占い館双方の話し合い報告を聞き、備品の必要書類をチェックをしていた陽津子が、同時進行で私の採寸状況を見守っている。
まったく、明介の名前を出せばごまかせると思って!
憤慨しながらも私は、いつのまにか占い師を引き受けている件についてとやかくいうのを止めて、すらすら動く陽津子の動きに言及することにしてみた。
「よくそんな同時に処理できるね」
「おかげさまで優秀ですから。それにゆらの事は別腹よ、私」
「そういうのいいです」
「もう、つれない。かなしい」
グラデーションの入った夜空のようなマントを両端に持って生地を上げたり下げたりしていると、
「ん?」
突如、身に覚えのある違和感の気配を感じた。
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