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街路樹はキンモクセイの香り一色だったところに、にぎやかな香りが紛れてくる。
チョコバナナ、やきそば、おこのみやき……外で屋台を出す権利を勝ち取ったクラスや有志団体が、すでにお祭りに向けて準備を始めていた。
「さ、ゆら着替えて着替えて!」
「陽津子、私のシフトは午後だよ?」
いつもにはない華やかでファンシーな装飾が施された教室に入ると、おはようの挨拶も途中で、陽津子にマント――彼女曰くこれはケープ!――を差し出された。
見ると、喫茶班も占い班も店員シフトの人達も、さらには私以外の占い師達も衣装を着て教室の真ん中に集まっている。
その前には、三脚にカメラ。
「シフト制の占い師衣装を人数分用意したのは、集合写真を撮る為だったのね」
「そういうこと、さあさ、どうぞこちらに……いい? あ、これってセルフタイマーというものかしら? ええと……今日この日が、みんなのための楽しい時間になりますように」
パシャリ、というシャッター音と同時に、全生徒集合のアナウンスがかけられた。
殊勝な事を言うところが陽津子らしいと思ったのか、写真に写っていた私は、少しだけ笑ってしまっていた。
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