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そんな横で楽しそうにしている明介に、私は声をかける。
「明介はほかに行きたいところないの?」
「え?」
「文化祭。私の行きたい場所に合わせてくれてるでしょう?」
「いや、俺も楽しんでるよ。もともと、好きなものも一緒だったじゃないか。小さいころから……」
そこで言葉を小さくした明介は、私の視線に気づいて言葉を続けた。
「メディアにかかわるもの以外は、だけど」
「う、確かに流行りの歌とかテレビはわからないけど……」
あわせて言葉をしぼめてしまった私。
明介としばらく黙りあって、隣を歩く。
私たちがちょうど通りがかったお店では、酵母をつかった手作りお菓子が売られていた。
PTA主催の模擬店。ギンガムチェックのテーブルクロスに並べられた品々を横目でとらえる。
ベーグル、スコーン、パウンドケーキ……ドーナツは、置かれていないようだった。
「明介は」
ふと口にしてしまった自分に驚く。歩きながら一呼吸、うん、と返事をくれる。
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