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「……私に、聞きたいことがあるんじゃない?」
「それは、聞いて今、ゆらが教えてくれる事なのかな」
「……」
「言える時でいいよ。それまで俺の台詞はこうさ。『目、またクマがついてる』」
「……うん。『いつものことだから、気にしないで』」
「了解――それに」
「え?」
聞き返した私に、明介は微笑みを浮かべた顔を向ける。
続きの言葉はそこになかった。けれど明介が安心させるように笑うから、私も一緒に顔をほころばせる事ができた。
明介は、私が夜も起きている事を知らない。
なんとなく、私から話してはいけないような気がしていた。明介に私に纏わるこの現象を言ってはいけない気がしていた。
夢をくりかえすようになった、はじめから……。
少し経ってから、横で明介が小さく開口していたことに、私は気付けないでいた。
「――――――……」
無意識なのか意識的なのか、その声は私の耳に届くことなく、空気の彼方に消えていった。
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