Ⅲ.ようこそ、夢占い喫茶:ショコレットへ!

29/43
前へ
/173ページ
次へ
座席に熱気がこもり始めた中でふいに、一滴の水が落とされたような音が響いた。 舞台はオアシス一色。流水のような音とともに、一人の女子生徒――踊り子がスポットライトを浴びながら、優雅に手足を滑らせ、舞い始める。 「和歌月さんだ」 観客の息をのむような無音が、すごい、という言葉を代弁しているかのようだった。 まるで、天に祈る巫女のような舞。 熱気が抜かれ、水面の中にいるような感覚を、観客たちは得始めていた。 得始めていたのだが。 突如、舞台装置が大きな音を立て、爆発した。 演出か、と一瞬は声を抑えていた人々は、やがて両舞台袖を覆うのが本物の炎であることに気づき始めると、観客席各所で大きな悲鳴が上がる。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加