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「夕火!」
沢山のざわめきの中、風倉さんが立ち上がり叫んだ。
燃え盛り始めた舞台に、今にでも飛び込んでいきそうな勢いだ。
口が、風倉さん、と発音しそうになるのを必死に抑える。
今は彼の名前を呼んではいけない。現実の彼と私とは、そもそもの接点がないのだから。
けれど。
舞台の上の和歌月さんが風倉さんをとらえ、何か叫んでいた。煙が彼女の口に入り込んだのか、その声は音になって響かず、彼女はその場に座り込んでしまう。
交差点に転がる靴の映像が、私の頭を鮮烈に殴ったような気がした。
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