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私の感覚は、瞬時に会場を覆う暗幕をとらえていた。
会場を覆う暗幕。夜の色。
そこで私は思い出す。
そうだ、この空間を覆う巨大な布は。あのローブと同じ夢の気配を纏っているじゃないか。
ビリリ、という裂けた音は、この混乱の中では弱弱しく響いた様に思える。
「ゆら!」
それでも幼馴染は、私の音を聞き逃さなかった。
それだけは本当に救いだ。もし私という存在が消えたとしても、きっと明介は、私のことを覚えていてくれるだろう。
私はそれを素早く纏ってしまう。ローブの様に。
それから強く念じる。あの空間と、夢の中と同等の空気を纏っているというのなら……
店主である私の想像力―――武器となれ。
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