Ⅲ.ようこそ、夢占い喫茶:ショコレットへ!

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刹那、舞台の上手から下手にかけて、雨雲が広がった。 雲は煙と同化――否、煙を取り込むと、その純度をあげていく。 十分に蓄えられた水は透いた雨粒へと形成されていくと、研ぎ澄まされた矢のように、一気に炎の柱に降り注いだ。 炎と煙が完全に消え去った舞台の上に、一人の踊り子が目を(しばた)かせていた。 思考は戸惑いながらも、身体はきちんと舞っており、そして記憶の中で途切れていた筈の音楽は、まるで何事もなかったかのように鳴り続いている。 先ほどまで会場を揺らがせていた観客たちは、揃って元の席に身をおさめ、舞台の踊り子を夢心地で見つめていた。
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