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「すみません、もう閉店の時間なんですよ」
ローブにつけられたベールを目深くかぶったから、私の顔は相手に見えない。
勿論私の方からも、相手の顔は伺えない。
身じろぎし足を踏み出す仕草で、小柄な体格なのだと察知する。
聞こえる声も、男性にしては少し高いもののように思われる。
隙間から見える男の口元が、ゆっくりと吊り上がった。
「へえ、残念だなあ。夢占いなんて、まさに絶好の探し場だと思ったんだけど」
「……ご期待に沿えずにすみません。求められているほど本格的なものではないと思いますよ」
なにせ単なる文化祭の出し物ですから。そう付け加えてみると、男は文化祭ねえ、と意味ありげに復唱し、また一歩近づいてくる。どうやら一筋縄ではいかないらしい。
「さっきの大きいホールでの舞踏?も出し物か。随分と完成度が高いものだな。まるで本物に近い炎と煙まで顕れたときてる」
ピク、と耳先が動いた事を察知されてしまっただろうか。
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