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「舞……って……」
呆然と繰り返した先で、扉は完全に閉じられた。
瞬間、部屋の内外にざわめきが戻る。
「椎尾さん、もうローブ脱いじゃって大丈夫だよ~!」
クラスメイトが笑いながらそう指摘してくれた声を背後に、私は、すっかり「いつもどおり」になった教室の一員に溶け込んでいった。
先程までの異質な空気はなくなっていたけれど、私はまだ心の中がドクドク波打っている感じだった。
「ゆう! 公演、すっごいよかったよー!」
その声に私は振り返る。
制服姿に戻った和歌月さんが、クラスメイトに囲まれ照れている光景だった。
その和やかな景色の中で、ふいに私と和歌月さんの視線が交わる。
――あの舞は、強力そうだ。
私の中で、さっきの男の言葉が、ゆっくりとよみがえった。
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