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二日間の文化祭が閉幕した次の日。
切り開かれたように青い空は清々しく、午後の麗らかな空気が流れている。
それはガラス窓を通した条件でも同様で、喫茶店の中は、穏やかなクラシック調の音楽と珈琲の深い香りで満ち溢れていた。
そんな「心落ち着く」代名詞とも呼べそうな空間に身を置きながらも、先程から気分が落ち着かない私は、喉の渇きを覚えたわけもなく、ただカップを片方の手で持ち上げる。
「珈琲も飲むんだ。紅茶が好きなのかと思ってた」
口に触れようとするや否や。正面から、凛とした年上の女性に相応しい声が放たれた。
「……どちらも飲めます」
そうじゃなくて。
ソーサーの上にゆっくりと戻し、身体の方向を斜めに変える。
「和歌月さん、こっちに座らない?」
目の前に三対の眼が並んでいると、さすがに落ち着かない。その旨を話すと、和歌月さんは快諾して私の真横にやってきた。
目の前の大人二人組……のうちの一人、絵羽茶英名が再び口を開く。
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