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ボロボロの頁をめくっていくにつれ、枯れ死んだ花のような匂いが、鼻を刺してくる。
かろうじて残された紙の中の、ヒーツロイスという人物の欠片達を拾い集まって、頭の中で揺れていた。
街の住民達を気遣う、カリスマ性に溢れるお姫様。私と変わらないだろう年頃の女の子。ギフトのような彼女の魅力が、年を取るごとに真逆になっていく。歩き踊ればくろい霧が生まれ、感情が高ぶれば炎が焼き広がった……よくある悲劇の設定だなんて、焼け落ちた肖像画の少女に向かって誰が言えるだろう。
息が詰まりそうになった中で、挿絵の機能を維持した頁が現れた。そこに描かれた人物が、文化祭の日の一場面と彷彿とさせていく。
一瞬無人となったあの教室で、フードの端から見た面影を。
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