Ⅲ.ようこそ、夢占い喫茶:ショコレットへ!

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「このマントの生地って、どこで入手したの?」 マントの長さを調整していた採寸係の奈河藤(なかとう)さんが、ぱっと顔をあげてはにかんだ。 「これ?いい生地でしょう。洋賀(ようが)先輩から譲ってもらったの!」 洋賀先輩。聞き覚えのあるワードに、首をかしげていると、 「洋賀先輩は家庭洋裁部(うち)の副部長だよ」 こうばしい香りと一緒に現れたのは、明介だった。 「おお、宇面木(うつらぎ)。もしやその手の中にあるのは」 男子生徒が明介のまわりに集まってくると、明介が天板にふれるなよ、と言ってから、それをお披露目する。 「家庭科室借りてつくってきた。毎年、家庭部では手作りのクッキーを販売してるんだ。家庭洋裁部と組んで文化祭で委託販売するっていうのはどうかな? 出し物自体面白そうだし、相互宣伝になるからうちはいいよ、って洋賀先輩からも伝言預かってる」 夢占いモチーフの形だ~! と目を輝かせる生徒たちは、明介から試食を進められると、思い思いに口の中に放り込んでいる。 あ、と両手の長いマントの袖を持ち上げていると、天板を男子生徒の一人に託した明介が私の目の前に立ち。 「はい」 私の口の中に星型のクッキーを入れ込み、横で立っていた奈河藤さんに、 「首元、2センチくらいあそびを持たせたほうがいいと思う」 それだけ言って男子生徒の輪の中に戻っていく明介。 「目測……」 「愛ね」 奈河藤さんと陽津子が呟く。 味わいたかったのに、口の中のクッキーの味はよくわからなかった。
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