Ⅲ.ようこそ、夢占い喫茶:ショコレットへ!

17/43
前へ
/173ページ
次へ
結局、「書斎」で調べてみても、陳列棚達にきいてみても、手がかりになりそうな情報は得られなかった。 もし「ミセ」の空間や夢の時間と、現実の時間がリンクしている可能性があるなら――【裏庭】に居る筈の「おねえさん」に会えるかもしれない、という私の僅かな希望は実らないままでいた。 おねえさん。 私を助けてくれた人。 私が夢の中で「ミセ」を持つようになった原因の人。 「……」 時間が経つにつれて、あの時の記憶は朧げになっている。 おねえさんという人は、本当にいたのか。 私は本当に、彼女からこの場所を継承したのか。 私はただひとりで、錯覚のような夢をみているのではないか? だって、夜見るのは夢に違いないのだから……。 テーブルにコトリと置かれた紅茶に口をつける。 それはやっぱりあたたかくて、うその味なんかじゃなくて。 口の中も、目元も、じんわりとあたたかくなる。 「……ありがとう」
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加