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結局、「書斎」で調べてみても、陳列棚達にきいてみても、手がかりになりそうな情報は得られなかった。
もし「ミセ」の空間や夢の時間と、現実の時間がリンクしている可能性があるなら――【裏庭】に居る筈の「おねえさん」に会えるかもしれない、という私の僅かな希望は実らないままでいた。
おねえさん。
私を助けてくれた人。
私が夢の中で「ミセ」を持つようになった原因の人。
「……」
時間が経つにつれて、あの時の記憶は朧げになっている。
おねえさんという人は、本当にいたのか。
私は本当に、彼女からこの場所を継承したのか。
私はただひとりで、錯覚のような夢をみているのではないか?
だって、夜見るのは夢に違いないのだから……。
テーブルにコトリと置かれた紅茶に口をつける。
それはやっぱりあたたかくて、うその味なんかじゃなくて。
口の中も、目元も、じんわりとあたたかくなる。
「……ありがとう」
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