Ⅲ.ようこそ、夢占い喫茶:ショコレットへ!

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結論から言うと、夢占い喫茶は予想以上の客入りを見せた。 まず、文化祭準備の為に朝食を抜いてきたという近隣クラスの生徒達が数名に続き、クッキーの納品に来てくれた家庭洋裁部の面々、和歌月さん所属のダンス部のメンバー、そうしているうちにクラスメイトの家族や外部のお客さんも加わって、あっという間に部屋は人で溢れかえっていた。 夢占い、という物珍しいコンセプトも様々な人の興味を惹き、宝くじのような感覚もあいまって、占い師に夢占い――といっても、占い師は準備されたチャートに沿って解説とアドバイスするだけなのだが――をしてもらおうとコンセプトクッキーやらドリンクが軒並み売れ、中では売り切れてしまったものもあった。 「一旦閉めましょう」 その状況を嬉しい事ながら、よろしくない、としたのは陽津子だった。 教室の中の流れが早く、皆疲弊している様子を一早く察知し、鶴の一声を上げたのだ。 裏方にまわっていた明介が、満足感と汗を浮かべながら賛同する。 「それがいい。経費で家庭部のアイスティを買ってきていいかな。多く入れてしまったかもしれない、って先輩が嘆いてたから」 「もちろん構わないわ。商売上手ね、そういうとこ好きよ明介君……ゆらもお疲れ様」 「うん……」 最初店内の雰囲気を味わっていた私も、急な客足増加に店員として臨時に駆り出されていた。 接客をするのは(この時間中は)慣れていなかった私を労わって肩を叩いた陽津子が退室すると、明介が人数分の飲み物を持ってきてくれた。 夏の置き土産のパイナップルの香りが、甘く冷たく口の中に広がるのを堪能する。 私たちのクラスは早くも部分休憩時間を設けることになった。
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