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「何のことでしょう? 学校での公演は安全設備のもとで行われていますが」
額に汗がつたう。先ほどの炎の正体を知っているような口ぶり。まさか、この人が大ホールに火を……いや、火の色をした幻をみせたの?
一体、何の為に?
その行いも、空の教室も、理由になってしまっている。目の前の人物から、今私は悪いものしか感じられない。
「ところで」
男が開口する。
「随分といい布だと思わないか?」
「……はい?」
「折角、一級品の香りが塗布されていたのに。あの暗幕と君の衣装の事だよ」
「……!」
反射的に後ろに下がる。けれどもう、背後には壁しかない。
「そうそう。隠しても駄目さ。人間がここに居るという時点で判明している。残れるのはそう、特別なアクセスができる者だけだ」
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