Ⅳ.カップに溢れる祝祭を

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「……“口外厳禁“の取り決めは、あの空間を持った時点で私が自分に課したものです。実際口に出したからと言って何か悪い事が起きる、なんてことはないです」 二人の目――勿論、客であった風倉さんと絵羽さんだ――を視て、それこそカップの(ふち)をなぞる様に言った。 それを聞いて、二人は少し肩の力が抜けたようだ。 「……まさか風倉くんも、あの不思議なお店の来客者だったとはね」 「同じ言葉を返しますよ。そしてまさかまた、あの時の店主さんにお会いできるとは思いませんでした」 稼業を全うできているのはあなたのおかげでしたから、と付け加え、風倉クウヤからお辞儀を受ける。年上の人気アイドルから頭を下げられると、唯の中学生である私はたじろいでしまう。 加えて彼の妹である和歌月さんからもとなれば、なおさらだ。 北西から兄妹のお辞儀に囲まれてしまった私を見て、絵羽さんが小さく噴き出した。
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