夜に溶け、朝に眠る

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夜は怖い。 だが、闇は怖くない。 何時も、闇の中に居るのだ。 何を怖がる事が有るだろうか。 …否、正しくは、怖くない事は無い。 唯その闇に慣れてしまっただけだ。 夜行性の動物を除き、人間や動物の多くは、日中活動し、夜中に眠ると言う行動を繰り返す。 ならば、僕は何だ? 夜中に眠れない。 夜と言う、時間が怖いのだ。 誰か居れば怖くはないだろうが、その誰かとは誰だ? または、我が懐かしき故郷の様に、何匹かの小さな雨蛙の合唱が聴こえれば、自分は孤独ではないと、僅かながらに安心するだろう。 だが、求めたのは生きた人間の体温なのだ。 対象が異性であろうと、其処に情欲の欠片は無く、36.7℃程の体温にやんわりと優しく、抱き締められたかった。 …否、訂正だ。 情欲が全く無い訳では無かった。 家族と言えども、愛情と言う情欲だ。 唯の36.7℃で腕の様な物で抱き締められたかったら、全身が湯湯婆の様に放熱する人形の様な物、或いは、棘が生えた拷問用の椅子に湯を掛け温め、その腕に抱かれて死ねば良いのだ。 「気持ち悪い。」 壁に凭れ掛かり、僕は瞼を閉じた。 瞼を閉じただけで、眠る気は無い。 眠れる気がしない。 下手をすると、その静けさに戸惑い、過呼吸を起こし出す。 または、隣室の住人が友人と騒ぐ声を聴き、孤独な自分を責め、舌を噛み、死にたくなり、過呼吸を起こす。 過剰に酸素を取り込んだ脳では正常な判断が出来ず、自分が泣き出した理由すらも冷静に分析出来なくなる。 「I'm better dead」 吐息と共に言葉を吐き出した。 そうしてまた、朝に成る。 朝の騒がしさは耳障りだが、夜の孤独よりはマシだと、やっと眠った。
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