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わずかにオレンジ色になり始めた日差しに照らされる公園、伸びる影。
丸い形の広場を囲むのは、カラフルなレンガで作られた、おもちゃ箱みたいなかわいらしい外見の家。
地面に敷き詰められたタイルに描かれた葉っぱの模様からは、緑に輝いている小さな粒が立ち上って、ミントの良い香りを漂わせている。
街を歩く人達の服装は様々で、ひらひらとしたフリルの沢山付いた豪華なドレスだったり、反対に手足に頑丈そうな鎧を付けていたり。学校の制服の様な格好の人もいるけれど、おへそを出していたり胸元がはだけていたりする。時々見かける箒に乗って空を飛んでいる人は、動きやすそうな軽装をしていた。
とにかく一つだけ言えることは、わたしが元居た世界では普通見られない様な服装を、この世界の人はしているということだ。
それこそ、ファンタジー世界の様な……。
それと同じで、わたしの隣に座っている魔法使いの女の子は、黒のローブと三角帽子という服を着ている。履いている靴も黒色だ。
ショーの時にはもっと派手なピンク色の、細かい模様も付いた見栄えのする服を女の子は着ている。
けれど、移動中はこんな風に、抑えた格好が普通だ。街中でもショーの時と同じ様な格好をしていると、ファンの人達に囲まれちゃって大変だから、らしい。
その女の子の身長は、大体わたしの胸元辺りの高さ。わたしの身長が160cmだから、女の子は大体135cmぐらい。体格も華奢で、まるで人形みたい。
青の瞳を持ったぱっちりとした大きな目。
エルフの様に、普通よりも長く先の尖った耳。
ピンク色のセミロングで、結わいてはいない、外跳ね気味の、くせっ毛の髪。
その女の子の外見は、十才ぐらいに見える。とにかく、わたしよりも年下なのは間違いない。
口元からはぴょこっと、小さな八重歯がこぼれていて。
幼い顔立ちをした女の子……魔法使いの、フィー。
――ここは、フローラルウィンドタウンの、とある広場。
そしてこの街が有る場所は、『魔法の世界』……。
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