5人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしはうさぎなんかじゃない! 動物なんかじゃない! 獣人でもない!
なのにいくら泣いても、そんな願いは通じない。
『……ごめんね。フィーのマジック、人間を他の動物やものに変えることはできるんだけど……元には戻せないんだ。』
そんなフィーの言葉を思い出す。そんなの嘘だって信じたいのに……確かにフィーがショーの中で、変化させた女の子を人間に戻していたことは、一度だって無くて。
……。ここは、本当に魔法が使える、夢の世界。だけどそれは……悪夢。
こんなの、悪夢だよ! 魔法って、魔法って、もっと素敵なものじゃないの? 人間を変えて楽しむなんて、そんなひどいこと、魔法はしちゃいけないはずなのに……!
「う、う……」
気が付けばまた、泣きそうになっちゃっている。
誰か。
助けて! 誰か助けて! もう嫌だ、こんな世界、嘘だって言ってよ! やだよ、もうこんなの嫌だよ……!
だって、わたしは人間だよ? 人間なのに。うさぎの獣人でもないし、フィーのアシスタントでもないのに!
わたしは人間で、あの日はただ街中に出掛けていただけで、それで、それで……。
……。
それで?
「あれ……」
呟いた途端に、急速に体温が冷えていく。
それで……それで?
目を閉じて、必死に考える。おかしい。こんなこと、こんなこと、絶対に有っちゃいけないのに。だって有り得ない話なのに。どうして、どうして……?!
真っ黒な絶望に覆いつくされる。一番気付いてはいけないことに気付かされて、世界がひっくり返るみたいで、くらっと目眩がして、ふっと意識を無くして倒れてしまいそうになって。
「あっ!」
だけどその時。突然、フィーが声を上げて。明るい声が公園に響く。
最初のコメントを投稿しよう!