第一章【再始動】

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 耳に嵌めたイヤフォンから、お気に入りのロックが流れている。この曲を聴くと、不思議といいことが起こる、私にとってのハッピーソング。根拠はないけど、新しい生活もそれなりに素敵なものになっていくはず。  メロディーを口ずさみながら、教室へ向かう。今日は入学してから初めての全校集会が行われる。軽快に階段を登り、足を踏み入れた教室内は、まだ見ぬ生徒会長への噂で賑わっていた。 「え!? そんなにイケメンなの!?」 「でも……桜岡(さくらおか)くんには負けるんじゃない?」 「それが、桜岡くんとはまた違ったタイプの美男子らしいよ!」 「え!? この学校、顔面偏差値高すぎない!?」 「心臓もたない~!!」  そんな乙女たちの会話を通りすぎ、自分の席に座った。相棒のギターは置く場所が分からず、とりあえず自分の席の横に立て掛けた。 「あの子、ギター弾けるんだー」 「女の子でギター弾けるの憧れる~」  いつの間にか彼女たちの話題は私に変わっていた。目が合い、とりあえず会釈を交わす。高校生らしくないやり取りだ。  少し経ってから校内放送が入った。 「全校生徒の皆さん、おはようございます。全校集会を行いますので、体育館に集合してください」  その声に合わせ、校舎から離れた南側にある体育館へ移動を始めた。
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