0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
私は極度の不眠症。
気づいたときから、もう何日も寝ていない。眠れていない。
けど、だからといって体調が悪くなるわけでもない。体が怠いと感じるわけでもない。頭痛がするわけでもない。判断力が低下するわけでもない。
なにも異常はない。
◇
「――で、その次の火曜に小テストするんだってさ」
さいあく、と兄はぼやきながら茹でているパスタを軽くかき混ぜる。
「テスト期間じゃないのにテストするの? 大変だね」
「成績に関係するからサボれもしないし」
ぐるぐると菜箸で円を描きながら、兄は大きくため息をついた。
「兄さんがそこまで嫌がるなんて、珍しいね」
兄は絵に描いたような満点ばかり取ってくるほど成績に文句の付け所がないわけではないけれど、でも文句無しの良い成績はとってくる。苦手がないというわけでもないけれど、成績の凹凸は激しくない。高校の頃だって赤点すれすれまでの悪い点を苦手教科で取ってきたことはない。
「その授業の先生、割と性格悪い問題出すんだって噂」
「そっか、大学って先生によって問題が変わるのね……」
「ま、優秀なお前ならなんの問題もなさそうだけどな」
はは、と小さく笑い返しておく。
あまり勉強をしているわけでもないのに、何故か私の成績は変動しない。一時、定期試験で数学の勉強を禄にしないで受けたのにもかかわらず、満点だったことがある。
子供の頃から計算が特に得意だった。そろばんを習ったこともないのに何でか暗算が速かったと自負してる。軽い計算が必要なときはお母さんやお父さんに計算を求められるぐらい。
「あれ、あと何分だっけ?」
「あと1分20秒ぐらい」
「お、さすが」
そんな頼られ方をされても少し複雑なのだけれど、でもそれが家族の手伝いになるのなら私がどう思うかなんて正直どうでもいい話だ。
最初のコメントを投稿しよう!