完全なる管理社会の中で

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そいつは天井―――目測で床から十メートル程―――辺りまで飛び上がると、空中で体をくるりと回す。 そのまま天井を蹴り、俺の方に左手を伸ばしながら急降下してきた。 恐らくそのまま左指の針で突き刺すつもりだろう。 そのまま食らえばお陀仏なのは火を見るより明らかだった。 その針の殺傷範囲外に待避すべく、両足に力を込め後ろに下がった。 瞬間、大きく床が揺れる。 先程まで俺の立っていた場所に、5つの針が深々と刺さっていた。 (おっかねえなおい……。だが今がチャンス) 地面に針が刺さっている隙に距離をつめ肉薄する。 そして針が抜かれるより先に自身の間合いへと踏み込めた。 (()った! ) そして隙だらけの首元へとブレードを振るった。 首元に刃が届く寸前顔が此方を向くと、ロボの口ががぱりと開く。 口内に見えたのは銃口。 そして発火。 光と火薬の音がスローモーションに鼓膜を揺する。 そして放たれた弾丸は俺の耳を穿った。 耳から走る激痛に体感時間が平常に戻る。 俺はたまらず後ろに下がり、顎の辺りまで垂れた血を左手で拭った。 「……てめえなんでそんな、骨董品(アンティーク)を……? 」 「状態ノ良イモノヲ、少シ前ニ見ツケタノデナ。物珍シサカラダヨ。思ワヌトコロデ役立ッテクレタヨウダ」そいつは不快な笑い声をだしながら、悠々と針を抜く。 (痛えなチクショウ……、にしてもエネルギー式以外の飛び道具か。……厄介だ)深呼吸をして息を整える。 (だが幸い連射出来る類いのものではないみたいだな。さて、あと何回弾を放てっ……?! ) いつの間にか眼前まで来ていたロボは左手を横凪ぎに振るう。 反射的にその軌道に差し込むようにブレードを入れ、更に衝撃に耐えられるように左腕で補強する。 数瞬、ブレードと針がかち合った。 あまりの衝撃にブレードを落としかける。 「考エ事トハ余裕ダナ」 「生温い攻撃ばっかだからな……! 」全力の前蹴りでロボを突き飛ばす。 ロボは蹴られた方向に飛ばされるが、体勢を崩すことなく、構えをとる。 「……ソノブレードハ素晴ラシイナ。私ノ爪ニ傷ヲ付ケルトハ」 そいつは針を見ると感嘆の声をあげる。 微かにだが、傷が付いていた。 「安心しろ、しっかり叩き切ってやるよ」 (っても……あの針が切れるまで打ち合わせてたら絶対俺の体が持たねえ。)右腕の痺れを感じながら俺は考える。 (さてどうしたもんかね……)苦笑いしか出なかった。
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