完全なる管理社会の中で

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「成ル程。コウ言ウタイミングデ蹴レバ有効打ニナルノカ」ロボは納得するように自身の顎を右手の金属製の指で撫でる。 男が蹴り飛ばされた先には警備ロボの残骸や壁の破片で砂塵が舞い、煙の壁で視界は遮られていた。 ロボはそちらを見ると、「コレグライジャ、クタバラネエダロ? 立テヨ」 と光線を返された時と同じセリフを吐く。人間の誰が聞いても完璧な挑発だった。 それが耳に届いたのか、ガラガラと瓦礫をどかす音と共に、男は煙から顔を出す。 「……人を、バカにしやがって」 そうしてブレードを右手で握り杖のようにして、息も絶え絶えに男は出てきた。 その様子と、口の端から垂れている鮮血が先程の蹴りのダメージを物語っていた。 「随分ト辛ソウダガ大丈夫カ? 」 「あぁ、元気すぎて怖いぐらいだ」 「ソウイウノ虚勢ト言ウノダロウ? 知ッテイルゾ」 「いちいちうるせ……? 」男はふらりと体がぶれると、そのままがくりと膝をつく。 「ヤハリナ、安心シロ。……シッカリ引導ヲ渡シテ―――」その時、ロボへと何かが飛んできた。 その方向は男の方からだ。 反射的にロボはそれに対して右の刃を当て切り裂く。 刃に当たることにより減速し、それの正体をロボは理解する。 それは警備ロボ達の持っているエネルギー式の小銃だった。 切られることにより濃度の高いエネルギー液が周りに飛び散る。 それは近くにいたロボの両目(カメラ)にも当たった。 人間であれば一瞬で溶けるような高濃度エネルギー液は、さしものロボでも無傷とはいかなかった。 ロボは視界が潰され、肩辺りにあるサブカメラを急いで起動する。 そこに写し出されたのは、肉薄し間合いに入った、歯を食い縛り、ブレードを上段に構えた男だった。 そしてそれを一気に振り下ろす。 ロボが最後に見たものは自身が両断されている姿だった。
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