完全なる管理社会の中で

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先程とは違うエリアの端。 見るからに壊れかけの人の住んでいなそうな2階建ての小屋の中―――ではなくその地下から微かに呻き声が聞こえてくる。 そこの地下には10畳ほどの部屋が1つありそこには、上の小屋のボロボロの外見からは予想もつかないような、高価な医療機材や薬品が所狭しに置かれていた。 そんな部屋の中央、リクライニングチェアのような物―――ここではこれが手術台だ―――に義手の男は横になっていた。 「……毎度の事ながら良く生きているな、お前さんは」 白い髭を蓄えた老人は、目元のゴーグルをときたま弄りながら、義手の男の腹を縫合していた。 「まだ、死ぬわけにはいかねえからな。……ちょ、痛い、痛いぞ! 少しは優しくしろ」 「麻酔慣れしとるお前さんが悪い。……ほれ、もう終わるからじっとしとれ」 老人は余った縫合糸を慣れた手つきで切ると、手元の棚―――様々な器具や薬品が置いてある―――の一番上にある試験管のような物を手に取り、中身を傷口に振りかける。 試験管から飛び出た緑色の液体はぺたぺたと貼り付き、肌と一体化する。 「さて、とりあえずはこんなもんじゃろ」と胸ポケットから老人は葉巻を取りだすと火をつけ、くわえた。 「でだ、お前さんいつまでこんなこと続けるつもりだ? もうこれ以上は流石にお前の体が持たな―――」 それ以上の言葉を遮るように男は老人の肩を2度叩く。 「まだまだこれからお世話になるぜ、名医さんよ」 「……じゃあその名医にいつ金を払ってくれるんだ? 」 「……あーあれだほら。……と、とりあえずツケで」 「……まぁとりあえず安静にしておけ」 「へいへい」 老人は口元から煙を漂わせながら部屋から出ていった。
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