第1章

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 「い、いやああああああ!」  パソコンは電源を落とさず、そのままにして飛び出るように会社を出た。ひたすら走って家に辿り着く。まだ、先ほどの不快な音が耳にこびりついて離れない。蓮美はトイレに駆け込み嘔吐した。明け方までトイレから離れることは出来なかった。  翌日、蓮美はだるい体にむちを入れ、なんとか会社に入った。恐る恐る自分のパソコンを見る。電源ランプは点いていなかった。電源ボタンを押し、パソコンを立ち上げる。見慣れた壁紙とアイコンの羅列が出てきた。 メールボックスを確認する。昨日のメールは無くなっていた。  (一体何だったんだろ)  安心感と恐怖感を同時に味わい続けていると、上司の怒鳴り声が蓮美に届く。  「蓮美。まだ資料出来てないのか!いい加減にしろ!」  蓮美は席から立ち上がり、謝罪し元の業務へと戻った。  昼休憩時、先輩とランチを食べていた蓮美はこっそり昨日のことについて、相談した。 メールを開いたら、勝手に動画が流れたこと。 気味の悪い映像であったこと。すると、先輩は  「うーん。映像だけじゃ本物かどうか分からないよね」  「何で映像だけですか?音も......」  蓮美の言葉は聞こえていないのか、先輩は話し続ける。  「元々、この会社全てのパソコンは音が出ないように設定されてるし。あれ?大丈夫?顔色悪いよ」  
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